最近では、ビジネスシーンにおいて「コンテナ」という言葉がよく使われる傾向にあります。特に、IT業界では重要なキーワードになると言えるでしょう。アプリケーションを動かす時などに役立つのですが、今まで使ってこなかった方にとっては、聞き馴染みが無いため難解に感じるかも知れません。そのような方に向けて、この記事ではコンテナとは何か、メリットやデメリット、さらに将来性についても紹介します。

コンテナとは何か

コンテナとは一体何なのか、以下で詳しく見ていきましょう。

IT業界に無くてはならない存在

コンテナと聞いて、最初に何を想像するでしょうか。
本来は「何かを内部に含むもの」という意味です。船や飛行機、トラックなどで運ばれるというイメージが強いと思います。一度物品物を入れれば、積み替え不要で運ぶことができるので、物流に欠かせない存在となっています。
IT業界においても、同様に重要な役割を果たしています。ITのコンテナは、アプリケーションの実行に必要な環境を、一つの独立したパッケージとして扱う仮想化技術のことです。
アプリケーション、それを動かすためのミドルウェア、OSの一部などが含まれています。
他のコンテナにも同様にアプリケーションなどが含まれており、同じ船で動いている、というイメージです。
クラウドやオンプレミスなど、環境に左右されること無く、アプリの実行環境を持ち運ぶことが可能となっています。

動作させるソフトウェアが必要

単体で動く訳では無く、動作させるためのソフトウェアが必要となります。
「コンテナ管理ソフトウェア」と呼ばれ、代表的なのは「Docker」です。アプリケーションの作成、デプロイ、実行を容易にするための機能があり、処理が高速で非常に軽量という特徴があります。
他のソフトウェアと比較しても動作が軽くて使いやすく、構築環境の共有や作業の分担がしやすいため、多くの開発現場で重宝されています。

コンテナとハイパーバイザーの違い

コンテナという技術が登場する前は、ハイパーバイザー型という仮想化技術が主流でした。
ハイパーバイザー型はゲストOSをインストールし、その上にアプリケーションやミドルウェア、ライブラリなどをインストールします。仮想環境に構成要素を一つ一つ構築していくタイプなのですが、非常に時間と手間がかかるので大変です。
そのような問題の解決に繋がったのが、コンテナ型の仮想化技術です。ゲストOSのインストールが不要になり、開発やリリース、デプロイなどの構成要素がコンテナにまとめられ、アプリケーション環境を独立させて構築することが可能になりました。
時間と労力の大幅な削減に繋がり、可搬性も上がったため、アプリケーション環境の構築において、大きく貢献しているのです。

コンテナのメリット・デメリット

メリットとデメリットには、どのようなものがあるでしょうか。

メリット① リソースを効率的に利用できる

一つのOSにつき、多数のコンテナを管理することができるのが特徴です。
従来の管理技術と比較しても軽量なので、必要とするリソースが少なく済み、効率的と言えるでしょう。
起動が速く動作も高速なため、高い性能を少量のリソースで発揮できます。

メリット② 一貫性があり可搬性

必要なセットをOS単位でまとめて、独立させることができます。
必要なミドルウェアやライブラリを一つにまとめて、アプリケーションの環境を変えないように工夫することで、一貫性が保たれるのです。
また、アプリケーションを実際に動かす際にコンテナごと移すことができるので、ポータビリティ(可搬性)が充実しています。

メリット③ 柔軟性がある

物理的なサーバーと仮想サーバーの両方にコンテナを構築可能で、追加することで拡張も可能です。
アプリケーションの全体だけでなく、一部を修復・アップデートすることもできます。
軽くてポータビリティに優れているため、メンテナンスや開発、デプロイなどの作業効率が上がることでしょう。

メリット④ セキュリティが保たれる

アプリケーションが、それぞれ個別のコンテナの環境において実行されます。
どれか1つに問題が生じたとしても、他のセキュリティを確保できます。
また、アプリケーションを起動する以上は、セキュリティが危険に晒されるリスクがありますが、対策を施せば、安全なシステムを維持することができます。例えばコンテナセキュリティに特化している「sysdig」を使用すれば、可視化して根本的な問題を特定し、解決してくれます。

デメリット① ホストOSへの依存性が高い

ハイパーバイザー型の場合は仮想マシンごとに異なるOSを使用していますが、コンテナはホストOSを共有しています。
同じサーバーで複数利用することはできませんので、どうしても一つのOSへの依存度が高くなります。

デメリット② 運用が複雑化する

アプリケーションごとに環境を細分化できるのはメリットですが、コンテナの数が増えると複雑化するので、運用が難しくなるという問題もあります。

コンテナの将来性と需要について

将来性と需要について、以下で紹介します。

管理機能の充実

コンテナはIT業界では、知らない人はいないほどメジャーな存在となっていますが、今後注目すべきポイントとしては、実行環境の管理機能の充実が挙げられます。
管理系の機能としては、Kubernetes(クバネティス)が有名です。K8s(ケーエイツ)と略されることもあり、実行環境を管理し、自動化を行うソフトウェアです。
コンテナが多ければ多い程、サーバーの構築や運用が必要になり、運用や管理が大変になります。こういったデメリットを、Kubernetesが自動化することで解決してくれます。
このようなソフトウェア無しでは管理は難しいとされており、他にもOpenShiftやRedHatといった物もあります。

コンテナの需要

どのような場面で需要があるのか、3つに分けて紹介します。

①マイクロサービスの構築

複数のサービスにアプリケーションを分割し、開発やデプロイを行うアーキテクチャのことを、マイクロサービスと呼びます。
マイクロサービスを構築する時にコンテナを利用すると、それぞれで行われるサービスが異なっていたとしても、統一された方法で実行されます。環境の違いで発生しうるリスクを、極力減らすことが可能です。

②スピード感が求められる場面

時代の変化に応じてニーズは変化するので、スピード感を持って様々なアイデアを産みだすことが重要です。
コンテナを使うことで、様々な開発環境を迅速に構築できます。そのため、スピーディな仕事が必要とされるアプリケーションの開発などには向いていると言えるでしょう。

③ハイブリッドクラウド・マルチクラウド環境

オンプレミス・クラウドを問わずに、幅広い環境で実行できるのが魅力です。
そのため、ハイブリッドクラウド・マルチクラウド環境といった、複数の環境の組み合わせといった場面にも適しています。
オンプレミスの時のアプリをコンテナ化することで、クラウドへの移行もスムーズに行えます。

まとめ

コンテナは、アプリケーションの開発や運用において中心的な役割を担っており、欠かせない存在です。リソースを効率よく使える、起動が速い、移行がしやすいといったメリットもあります。様々な環境に対応できるので、導入する企業も増えています。業務を効率化したいと考えている方は、コンテナの導入を考えてみてはいかがでしょうか。